肩関節鏡の手術を受けられる患者様へ
腱板とは
腱板は肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋4つの筋腱で構成されます。
腱板断裂
加齢および繰り返す機械刺激、外傷を原因として腱板の腱線維が断裂した状態です。
40歳以上の男性で右肩(利き腕)に好発し、発症年齢のピークは60歳です。
加齢変化で断裂を生じます。
60歳で4分の1が、70歳で半数が断裂との報告もあります。
断裂しても症状がない人もいますが、夜間痛、動作時の痛みなど、症状がみられたら治療が必要になります。
当院の腱板断裂の治療計画
外傷性、若年(50代まで)、(1~3)か月の保存加療で改善しない場合は手術加療を勧めています。
当院の腱板断裂の術式決定
Cofield分類
小断裂:1㎝未満、中断裂:1-3㎝、大断裂:3-5㎝、 広範囲断裂:5㎝以上
肩関節と求心位
肩の関節は球形の上腕骨頭と受け皿である肩甲骨関節窩との関係で成り立っています。
求心位=肩甲骨関節窩に上腕骨頭がうまく入った状態
求心位を保つためには腱板や関節唇などいろいろな要素が影響しています。
求心位がくずれる原因は、腱板や関節唇の損傷、拘縮です。
リハビリ加療で求心位に戻らなければ手術が必要です。
手術(腱板や関節唇の修復、拘縮解離)で求心位に戻します。
戻したあと、キープするためのリハビリが必要になります。
手術までの流れ
全身麻酔を行うための術前検査(レントゲン、心電図、採血、尿検査、エコーなど)
肩のアンケート
麻酔科診察で全身麻酔の説明、合併症などの確認
→手術可能であれば
→装具(ウルトラスリング)
手術説明(医師) 入院説明(看護師)
持参
ノースリーブやキャミソールなど肩が露出する服、前開きのシャツなどがあると楽です。
かぶりものは、術後の肩に負担がかかります。
肩関節鏡手術は火曜、水曜、木曜に行っております。
手術前日の入院です。
入院費概算(食事代含む)
高額医療費適用もあるため3割負担なら概ね9万(1週)~13万(3週)。
1,2割負担なら7万(1週)~9万(3週)。
3日の短期入院プランなら4.5万~9万。
入院日
看護師の問診 病棟案内
リハビリの術前評価
夕方16時ごろ手術開始時間の目安が決まります(木曜は午前中だけです)。
肩関節鏡手術の手術時間は1~3時間です。200人の平均は2時間16分でした。
消毒、麻酔、装具、レントゲンなどで+1時間程度は手術室に滞在します。
手術日
全身麻酔がかかってから、麻酔科の先生がエコーを見ながら、痛み止めのブロック麻酔をします。
術後はしばらく手がしびれています。
麻酔がかかってから座った状態になって手術を行います。
肩関節鏡手術とは
φ4mmの内視鏡を関節内に挿入、大量の水(アルスロマチック)を流しながら手術します。
1:三角筋を温存できます。
2:5mmほどの傷が4-6か所程度。出血が少ない、侵襲の少ない手術。
3:モニターを見ながら術野を共有でき安全。
4:常に洗浄、感染の可能性が低い。
術後
手術翌日にガーゼ交換をします。
管(ペンローズドレーン)を抜去してシャワー許可になります。
リハビリは平日は1日2回。土日も急性期はリハビリを行います。
術後約10日で抜糸します(外来でも可能です)。
退院の目安
①更衣動作の自立
②シャワーの自立
入院期間:数日~最長3週間、平均12日
退院後の診察及びリハビリ
週1~3回の外来リハビリ(最初は2回以上)。
連携する開業医でのリハビリでも問題ありません。
最長5か月の外来リハビリが必要です。
診察の目安は3-4週に1回程度です。
術後3か月を超えると、経過により診察の間隔があきます。
少なくとも半年~1年は経過観察が必要です。
腱板を修復した場合は1年を経過しても1年に1回MRIでの腱板の評価を勧めています。
腱板を縫合した場合
3週で外転枕が外れてわきをとじられるようになります。
スリングだけしばらく使います。
入浴(湯船につかる)も許可しています。
6週で自動運動(自分で動かす)開始。
自分の力で90度以上(肩の高さまで手があげられる)を10秒以上保持できるようになれば自転車、車の運転が可能です(2か月~4か月)。
(4~)6か月で力仕事およびスポーツ復帰を段階的に許可しています。
腱板や関節唇が生着する(骨にくっつく)のは4か月が目安です。
肩が動くようになって、症状が改善するためには術後のリハビリが重要です。
すぐによくなる手術ではありません。
リハビリの時間だけではなく、リハビリの先生に教えてもらったことを自分で練習することが最も重要です。
術後5か月がリハビリ終了の目安になります。